昼名を買うため、みんなで車に分乗し山を下りてコンビニに向かいました。いちばん下っ端の私は当然運転係です。コンビニに到着すると、駐車場の空いているところを見つけて車をとめました。さあ昼飯だ。腹ペコだった私は一目散にお店に向かおうとしましたが、半歩踏み出したかどうかというところで先輩の職人に呼び止められました。
(中略)
なぜその職人が鬼のような形相で怒っているのか理由がわかりません。
(中略)
「切り返しが一回多い!」
「はい・・・・・・?」
「おまえな、ここにバックで入れるとき何回切り返した?」
「二回・・・・・・」
「アホ、三回や! 隣がギリギリなわけでもないのになんで三回も切り返しとんねん」
「すいません」
「最後に微調整でもう一回切り返しよったやろ? あれ余計や。二回でビシッと決めんかい、いらいらする」
そう言うと、職人はコンビニへと足早に向かっていきました。
たった一回の切り返しでも、無駄なものは無駄。それが職人の世界です。効率、スピード、質。すべてを兼ね備えていないと一流の職人とはいえません。(中略)一中の職人は例外なく短気です。非効率的で時間のかかることを極端に嫌うからです。その人も典型的な職人気質だったので、私の無駄な切り返しが気に入らなかったのでしょう。
こうして私は職人の世界にどっぷりと浸かっていきました。
・出典
プラントハンター/西畠清順、死と隣り合わせの職人修行、p122~124
・関連場所、商品
一流の職人になりたいなら、ここまでこだわらないとダメなんですね。
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