2015年1月16日金曜日

ウチワサボテンとイグアナの小さな格闘 そらみみ植物園/西畠清順

 遠い昔の話。陸イグアナはお腹がすくといつも近くにあったウチワサボテンをかじり、胃袋をみたしていた。あまりにも体をかじられるので、腹が立ったウチワサボテンは、長年をかけて硬い幹をまとい、背を高く伸ばすことに成功した。そうしたら、陸イグアナは以前のようにウチワサボテンをかじることができず、ただただ指をくわえてみているしかできなかった。そんな陸イグアナたちの死活問題を尻目に、かじられることもなくなったウチワサボテンは、悠々自適な日々を送っていた。
 そんなある日、陸イグアナと海イグアナが出会い恋に落ちた。そして子供を産んだ。うまれた水陸両用のハイブリッドイグアナは、陸イグアナのように陸で暮らすのだけれど、海イグアナのようなするどい爪をもっていて、なんとその爪でウチワサボテンの硬い幹をよじ登り、また以前のようにウチワサボテンの柔らかくておいしい部分をかじり始めたのだ。これにはウチワサボテンもびっくり。せっかく進化して、かじられないように背を高くしたのに。いまのところ、ウチワサボテンとイグアナの進化の競争はイグアナが優位のようだ。
 このガラパゴス諸島で繰り広げられている小さな格闘が今後どう展開していくか、長い目で見守りたいところである。何千年、何万年という進化の単位で。

・出典
そらみみ植物園/西畠清順、イラっとする植物、p36

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自分を変えたいっていうけど、何千年、何万年単位で変化してきた植物、動物に比べると人間一人が寿命の間で起きる変化なんて微々なるものなのかな。

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