たとえばずっと片想いだったからなのか、遠い異国の地でみたからなのか、出会うまでの道のりが険しかったからなのか、それとも孤独だったからなのか。
たしかにそういう感情が手伝って、旅の果てに出会う植物が必要以上に魅力的に感じてしまうことがある。
ジミ・ヘンドリックスが、初めてクラプトンを聞いたときは"いいね"って言ったくせに、次にきいたときは、"クラプトンの演奏でいいと思ったことはない。音楽ってのは、聞いたときの気分の問題だ"と言った。音楽でも植物でもそうだけど、それと出会ったときにどう感じるかって、たしかにそのときの状況や情景の影響は大きいと思う。
けど、一目見ただけで、「ああ、会えてよかった」と、一瞬で思える植物って、やっぱり特別な力をもっているのではないか。神が作った彫刻のような植物。命を懸けても近づきたいと思わせてくれる植物。そんな、シチュエーションをぶっ飛ばす、植物との出会い。いや、結局シチュエーションはそこにある植物が作り上げていたりするのかもしれない。
おれが旅する理由は、植物である。植物に用があるから、たまたま遠い国へ出かけるのだ。別に旅そのものに興味があるわけではない。とにかく自分の一生を想ったとき、そういう植物に出会えることこそが、おれの人生のハイライトであり、この仕事が天職だったと思えるのです。
・出典
そらみみ植物園/西畠清順、植物そして、旅、p54,55
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