2015年1月20日火曜日

日本国中はわが庭 心/高田好胤

 昔、太閤秀吉が非常に可愛がっている鳥がいた。ところが、鳥番がその鳥に餌をやるとき、ちょっとした不注意で籠を開きすぎ、その隙間から鳥が逃げてしまいました。
 何しろ戦国の世を平定し、日本全国を統一したばかりの秀吉が可愛がっていた鳥です。それを逃してしまったのだから、どんなお仕置きを受けるかわかったものではない。命はないものを覚悟をきめて、鳥番は恐る恐る秀頼の前に伺候し、ことの次第を言上した。
 ところが、秀吉はかんらからからとうち笑ったというのです。
「お前、そんな細かいことを心配するな。日本国中六十余州はみなおれの庭なんだ。籠の中から飛び出した鳥はいまどこを飛んでいるかしらないが、いまごろおれの庭のどこかで嬉々として囀っていることであろう」
 この「日本国中がみんなおれの庭」というのが「三界はこれみなわが有なり」という言葉の意味です。これがつまり「空の心」ということにもなります。
 私たちはなかなかこういう境地には達せられません。大事な鳥なら、籠の中に飼っている状態しか”自分のもの”と意識できない。だから。それを他人が逃したら怒るということになる。怒られた方も「鳥の一羽や二羽、ケチケチしやがって」と以後、二人の仲は険悪になる。それだけのことで、友情がこわれてしまうということにもなりかねません。
 そのときの気持次第で生涯の友人を失うか、あるいは逆に生涯の友人を得るかということになります。


・出典
心/高田好胤、第 Ⅱ 章 「般若心経」の心 広く広く、もっと広く、p107~109

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これぐらいの心持ちで世の中のことに関わっていけたらいいですね。でも、最近は権利関係が厳しくなってきてるので、「日本国中がみんなおれの庭」だと言って他人の畑の作物をとったら御縄になる可能性がグッとあがりますね。

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