2015年1月18日日曜日

人間を利用した家畜 弱者の選択/稲垣栄洋

 現在、人間が家畜として利用している動物の中には、自然界では弱い存在である生き物も少なくない。
 ウマも犬と同じように群れを作る動物である。そのため、犬と同じように、コミュニケーションを取ったり、リーダーに従順に従う能力に長けている。その能力が家畜として適しているのである。
 野生のウマは一夫多妻のハーレムを作る。つまり強いオスは、メスを独占することができる代わりに、弱いオスは子孫を残すことができないのである。弱いオスのウマにとって、人間は利用価値の高い存在なのだ。ウマは人間と暮らしていれば、肉食獣に襲われることは少ない。家畜になることは、身を守る上でも有効な手段なのである。
(中略)
 家畜というと人間に一方的に利用されているイメージが強いが、弱い動物である彼らにとっては、強い人間に寄り添うことは立派な戦略だったのである。
 まさかこんなにこき使われるとは思わなかっただろうが、今や世界中にどれだけの数の家畜がいるかを考えれば、分布を広げ、個体数を増やすという生物の目的から見て、彼らは間違いなく成功者であると言えるだろう。

・出典
弱者の選択/稲垣栄洋、第八章 強者の力を利用する、p165,166

関連場所、商品

・関連記事
飼い犬の戦略 弱者の選択/稲垣栄洋

0 件のコメント:

コメントを投稿