利休の茶室の庭に、見事なまでにたくさんのアサガオが咲いていると噂を聞いた秀吉は、あるに利休に茶会を開くように命じた。
"たいそう評判と聞く、利休の庭の朝顔が一体どれほどのものか"
秀吉がそのアサガオをたのしみに茶室を訪れたその日、庭に入ると、咲いているであろうアサガオの花が一輪もない。驚くべきことに全ての花が切り取られていたのだ。不支持に思った秀吉がにじり口から茶室に入ると、アサガオが一輪、静かに床の間に活けてあった。
利休は、あえて庭の全ての花を切り取り、逆に一輪の美しさをみせることによって、よりアサガオの美しさを秀吉に伝えたのであった。
なんとその一輪の美しいこと-
秀吉はその室礼にたいそう感嘆してしまったという。
このように、千利休というたった一人の茶人の美意識が、世の中のなにもかもを思いのままにしてきた天下人・秀吉の美意識に対するアンチテーゼのみならず、500年も前から足し算ではない引き算の美学を世界レベルで先駆けて見つめていたという、日本人が誇るべき利休の美意識を物語っているような気がしてならない。
・出典
そらみみ植物園/西畠清順、世界を変えた植物、p146
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秀吉という天下を取った人の美意識に感嘆を与えてしまう利休。自分の行うことでこのように一人の人間を感嘆させられたらどれほど嬉しいだろう。しかも、その相手が秀吉だと・・・。
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