2015年1月31日土曜日

高級品 時代の風音/宮崎駿、堀田善衛、司馬遼太郎

宮崎 いまの日本は、世界中からイカとエビを集めて、食いあさっています。食べすぎですね。
司馬 日本の豊かさというのは、いい悪いはべつとして、そんなもんであって、カニなんかでも、マツバガニでもズワイガニでも、以前はほとんど土地の人が旬に食べていたものを全国の調理屋が出す。
 松茸だって、近畿地方と四国の人、瀬戸内海岸にの人だけが食べていた。あれは主婦が今日の料理もなんにもないと思って、一山一銭か二銭の松茸でご飯でもしようかという程度のもんだった。私ら子供のときです。
堀田 私は明らかに覚えてますけど、貧乏なうちの子供がおなかをすかして学校から帰ってくるでしょう。「なんか食べ物ないか」っておふくろに言う。そうすると、おふくろがそこらにあったカニのでっこと太いアシを一本ちぎって、「これでも食べとけ」って(笑)、北国ですからね。そういうだぐいの食べ物でした。
司馬 つまりそういうものを高級料理屋が津々浦々までいつでもしょっちゅう出すということになると、品薄になって値段が高くなる。だから高級品になってしまうんですね。こういうバカなことをしているシステムが豊かさなんであって、それをやっぱり皮肉に思わなきゃいけませんね。そのために流通のロスがずいぶんある。土地の食べ物で満足しなくなったということがあります。

・出典
時代の風音/宮崎駿、堀田善衛、司馬遼太郎、6 食べ物の文化、うまさは国力から、p203,204

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値段の高いものは、なぜそれだけ高いのかをもう一度考えるきっかけになりました。

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