2015年1月30日金曜日

人類的な規模の観察者 時代の風音/宮崎駿、堀田善衛、司馬遼太郎

司馬 江上波夫さんが、あの好奇心の塊のような人が、二年ほどまえに北朝鮮にいらしたのです。ちょうど帰ってこられたころにばったいと大阪で会ったので、「いかがでしたか」と聞きました。そうしましたら、ああいう巨人の感想というのはおもしろいですな。何を見に行ったかというと、古代、ピラミッドでも万里の長城でもたいへんな人の手作業ですが、どのくらいの日数がかかったかという計算がいまの学問ではできない。
 それが北朝鮮に行けばわかると思っていったそうです。スタジアムをレンガ積んで作ってる。初めはなかなか進展しないで、時間が長くかかる。ところが人間というのは、ある時期からおもしろくなってくるらしい。だんだんスピードが上がってきて、「案外われわれが思っていたよりも早くできますよ」と言われるのです。それだけを見にいくだけのための旅でした。
宮崎 それはすごい。
司馬 こういうレベルの観察者にはかないません(笑)。体制がどうだとか、そんなことに関係ない。
 (中略)人類的な規模をもった観察者が日本にはいるということで、ちょっと心強い。いい話でしょう。

・出典
時代の風音/宮崎駿、堀田善衛、司馬遼太郎、1 二◯世紀とは、「ユニーク」な国々、p24,25

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昔の建築物ですごいなと思われるものでも、案外当時の人たちは作ることを楽しんでいた可能性もありますね。だいたいすごいなと思われるような人でも、その人からしたら当然のことをしているだけですよって顔しますもんね。

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