私たち人間が飼っているペットや家畜たち。もしかすると人間が彼らを利用しているようでいて、その実は彼らが人間を利用しているということはないだろうか。
人に従順な飼い犬は、もともとオオカミの仲間を飼い馴らしたものである。オオカミは群れを作って行動する。リーダーや順位の上位の強いオオカミは、攻撃的である。しかし、順位の低いオオカミは、従順でおとなしい。そんな弱いオオカミが、現在の飼い犬の祖先なのである。
ところが、「人間がオオカミを飼い馴らした」という話には謎が多い。犬が人間と暮らすようになったのは、一万五千年ほど前の旧石器時代のことであると推測されている。当時の人類にとって、肉食獣は恐るべき敵であった。しかも犬を飼うということは、犬にエサをやらなければならない。わずかな食料で暮らしていた人類に、犬を飼うほどの余裕があったのだろうか。また当時の人類は犬がいなくても、狩りをすることができた。犬を必要とする理由はなかったのである。
最近の研究では、人間が犬を必要としたのではなく、犬の方から人間を求めて寄り添ってきたと考えられている。犬の祖先となったとされるよわいオオカミたちは、群れの中で順位が低く、食べ物も十分ではない。そこで、人間に近づき、食べ残しをあさるようになったのではないかと考えられているのである。
弱いオオカミだけでは、狩りをすることができないが、人間の手助けをすることはできる。そして、やがて人間と犬とがともに狩りをするようになったと推察されている。こう考えると、当時、自然界の中で強い存在となりつつあった人間に寄り添うことは、犬にとって得なことが多かった。つまり、人間が犬を利用したのではなく、犬が人間を利用したかもしれないのである。
・出典(一部編集)
弱者の選択/稲垣栄洋、第八章 強者を利用する、p163,164
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利用し、利用されている。これが自然界の掟でしょうか。私も家畜やペットは人間が利用しているものと思っていましたが、相手側からすれば人間を利用しているということでしょうか。うまいことできてます。
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