動物の中でもっとも走るスピードが速いのがチーターである。チーターの走る速度は、時速100キロメートルを上回るというから、驚くべきスピードだ。一方獲物となるガゼルのスピードは、時速70キロメートルに過ぎないというから、これでは、とてもチーターから逃げ切ることはできない。
ところが、これだけ圧倒的なスピードの差があるにもかかわらず、チーターの狩り成功率は七割だという。つまり、三割ものガゼルは、猛スピードで追いかけてくるチーターから見事に逃げ切っているのだ。ガゼルは、どのようにしてチーターから逃げ切っているのだろうか?
チーターに追われると、ガゼルは巧みなステップで飛び跳ねながら、ジグザグに走って逃げるのである。そして、ときには、クイックターンをして方向転換をする。チーターは直線では最高速度を発揮するが、ジグザグに走るガゼルを追いかけようとすると、最高速度で追いかけることができないのである。
もちろん、ジグザグに走ったり、クイックターンをしていれば、ガゼルもまた自らの最高速度を出すことはできない。しかし、単純な直線距離の競争では、ガゼルがチーターに勝てる見込みは万に一つもない。走り方を複雑にすると、チーターもガゼルも、本来の最高速度を出すことができないが、そうして競争を複雑にすることによってはじめて、弱者のガゼルがチーターに走り勝つ可能性が出てくるのである。
「強いものは単純に。弱いものは複雑に」これは勝負の鉄則なのである。
※チョウが鳥などの外敵の攻撃から身を守るための逃避行動(ひらひらと不規則に舞う)においても同じことが言える。
・出典
弱者の選択/稲垣栄洋、第一章 生き物にとっての強さとは何か?、p33~35
・関連場所、商品
力あるものは真っ直ぐに、弱いものは工夫を凝らして。
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