堀田 私は、戦争中に軍令部臨時欧州戦争調査研究部という長い名前のところにいたんですけど、そこに毎朝、鎮守府からくる官報みたいなものがあって、その下のほうに軍艦の名前が、軍艦何々、何々、何々、と並んでいるのです。その横にぜんぶ、「艦籍を削る」と書いてあるので「艦籍を削るってなんのことじゃ」ってきいたんです。そうしましたら、それは沈んだという意味だというんです。はあ、なるほど、艦籍を削るとはそういうことか。人が死んで戸籍を削るのと同じ。
司馬 つまり、英語圏では、はっきりと沈んだとか、何人殺されたという言葉をちゃんと普通に使うのに、日本は玉砕したとか雅語に近くなる。とにかく言葉で巧みに本質をすり抜けるようにできていますですね。
堀田 それは敗戦ではなくて、終戦というのと同じ。
・出典
時代の風音/宮崎駿、堀田善衛、司馬遼太郎、6 日本人のありよう、「名こそ惜しけれ」の生きかた、p163,164
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