2015年1月30日金曜日

人間の暗い落とし穴 時代の風音/宮崎駿、堀田善衛、司馬遼太郎

司馬 ベトナムでは、人殺しの道具といえば村の鍛冶屋がつくったナイフだけでした。やっと一人が一人を殺しうる道具で、一ヶ月に三人も殺せば、ヘトヘトです。ところがベトナム戦争では、背の小さいベトナム兵が、熟練度もないのにバズーカ砲をかついで、一台五億円もする戦車を簡単にやっつけてました。それを文明だと思うところに、私ども人間の暗い落とし穴があります。普遍的思想と、最新兵器の普遍性とがかさなっています。
 キリスト教が広まったのも、イスラム教が広まったのも、「これは普遍的なものなんだ」といった思いからでした。それに加わらないと自分たちが田舎者になってしまう。イスラム教の場合も、二、三百年前、インドネシアの山の部落の人々が、商いのためにマラッカ海峡まできてイスラム教に接すると、これが普遍的なのだと思って結局イスラム教徒になった。そしてイスラムから来た商人と商取引をする。「同じだ、同じだ」という気分があって、たがいに安心できる。だから大宗教が広まったのでしょう。
 兵器もそうですな。女の子が「いまこれが流行っているのよ」ということで新しいスカートをはくように、人類は兵器に関しても、そうした普遍的なものを持ちたがります。

・出典
時代の風音/宮崎駿、堀田善衛、司馬遼太郎、 1 二◯世紀とは、武器のありよう、p30,31

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普遍的に広がっているものに対して、疑問を持たないと振り回されてしまいそうですね。一般的に高級ブランド品が高いのは出店している場所の土地代と広告費を回収するためです。例えば、ルイヴィトンの香水が道端で瓶に詰められて売られていても誰も買わないでしょう。それは都心の高級品店街で売られているからこそ価値があるんです。なんてことを、この前、糸井重里さんが言っていました。

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