2015年2月15日日曜日

大賢は愚に似たり 竜馬がゆく 一 /司馬遼太郎

「あの大男か。出来そうか」
「さて、試合ってみねばわかりませぬが、多少、愚に似たような仁でありまするな」
「大賢は愚に似たりと古語にもいうぞ。鋭さを面にあらわしてあるいているような男は才物であっても第二流だ。第一流の人物というのは、少々、馬鹿に見える。少々どころか、凡人の眼からみれば大馬鹿の間ぬけにみえるときがある。そのくせ、接する者になにか強い印象をのこす。土佐ではお城下の町郷士のこときいたが、ああいう人間の型は長州にはいない」
益田越中にとって、竜馬はなにかと気になる男なのであった。自分の生涯のなかでも、もう一度会いそうな気が、しきりとする。

・出典
竜馬がゆく 一 /司馬遼太郎、二十歳、p193

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